更新日:2018/07/23

公開日:2018/07/17

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キャラクターストーリー

ココロ編

第1話『ココロの心』

  • 「おはようココロ! ねえあれ見た? 昨日のライブTV!」

    「ううん……」

    「もー、ココロもたまには見てよ! ほんとかっこいいんだから!」

    「うん……わかった」

    「絶対だよ!」

    「うん」

  • 始業ベルが鳴り、担任が教室に入ってくる。

    海守学院1年A組の一時間目の授業が始まった。ココロは静かに授業を受けながら、ノートにペンを走らせる。
    ふと後ろから軽くつつかれ振り向く。

    「これ回して」

  • そう言われて小さなメモを渡される。
    そこには『今日カフェ寄って帰ろう~』と書かれてあった。
    ココロは一瞬迷った後、参加希望と自分の名前を書いた。

  • 放課後になり、ココロはクラスメートたちとオープンしたばかりのカフェに向かった。
    ケーキと紅茶を注文するココロ。ここでもまたテレビ番組の話となる。

  • 「ココロも今度こそ見てよね。今日の夜11時からだよ」

    「うん、わかった……見るね」

    「絶対だよ! 感想メールしてね」

    その後クラスメートたちは話題を恋バナに変え、帰るタイミングを失ったココロは彼女たちの話をぼんやりと聞き流しながら数時間を過ごした。

  • ココロが帰宅すると夕食の時間になっていた。両親と会話をしながら食事をとる。

    「ココロ、テストはもうすぐか?」

    「うん」

    「頑張りなさい」

    「うん」

  • 父親が優しく話しかけてきた。
    年頃の娘とどう会話をすればいいのかわからないぎこちなさだ。
    しかしそれ以上にココロが冷めていて、相槌しか打たなかった。

  • 風呂に入り、髪を乾かしてパジャマに着替える。宿題はとっくに片付けてある。
    あとはもう寝るだけ。ベッドに入り、電気を消す。

    「あ。テレビ……」

    ふとクラスメートとの約束を思い出す。
    上半身だけ起こして机の上にあるテレビのリモコンを取る。

  • 付けてみるとちょうど番組はやっていた。

    「これがみんなが言ってた……。でも、私にはよくわかんないな……」

    なんとなく見て、番組が終わると同時にテレビを消した。
    ココロはまたベッドに入って目を閉じる。時間は夜中の12時を過ぎたばかりだ。

  • これはココロのありふれた日常だ。
    何日も何日も、こんな風に冷めて過ごしている。
    きっとクラスメートたちは『変だよ』『もっと楽しもうよ』と思っているだろう。
    けれど、ココロは静かに、ただただ静かに日々を流している。

  • 暗がりの中、ぼんやりと目を開ける。
    今頃クラスメートたちは先ほどの番組について感想を送りあっているのだろう。
    しかしココロが参加する様子はない。

    「私にだってみんなと同じように毎日を楽しんでいた時があった」

    でもそれは『みんなと同じ』ではなかった。ココロの心はもうここにない。

  • 「だって私は心を殺したから……」

    本当の私とはどんな私だっただろうか。そんな疑問を持つことさえなくなったココロの心。
    それはココロが大切な存在を――もう一人の自分を拒否したときから始まった。

    -第1話 END-

第2話『楽しき日々』

  • 小学校に入学したばかりのココロは明るくて元気な女の子だった。どちらかと言うと元気すぎで、ご近所でも有名なおてんば娘だった。

    「ココロ。お母さん出かけるけど、ひとりで留守番できる?」

    「平気だよ! いってらっしゃい!」

  • 「返事だけはいいんだから。大人しくしていてね。……無理だと思うけど」

    苦笑いをしながら出て行く母親。
    彼女はココロを一人にするのが心配だった。ココロにとって留守番は自由に遊べる時間なため、毎度てんやわんやの大騒ぎをするからだ。家中をひっくり返すような遊びをしたこともある。

  • ではなぜ一人で留守番をしているにも関わらずそんなに騒げるのかというと、ココロには『もう一人の自分』がいたからだった。

    「さーて何して遊ぼっかな~。何がいい?」

    どこへともなく話しかけるココロ。

  • 「わかったわ! じゃあこれの練習ね」

    そう言ってココロは机の横に置いてある鍵盤ハーモニカを弾きはじめた。

    「あはは。そう。楽しい? 私も楽しい! 私たち、音楽が一番好きだよね~!」

  • 楽しそうに話すココロ。もう一人のココロは返事をしてくれるわけではなかった。
    しかし、ココロが話しかけると、ココロにだけもう一人のココロの気持ちが伝わってきた。
    ココロはこれを会話だと認識していた。

  • ある日、学校の担任がココロの家へと訪ねてきた。家庭訪問だ。

    「ココロちゃんはいつも元気で、授業もどれも楽しそうに受けていますよ。特に音楽の授業が楽しそうです」

    担任からこう言われた母親はとても嬉しそうにしていた。

  • 担任が帰ると母親はココロのことを褒めた。

    「お母さんとっても嬉しいわ。あんな風に言ってもらえて」

    「そう? 普通だよ。話し相手が傍にいたら、みんな元気に過ごせるでしょ?」

    「お友だちが大好きなのね、ココロは」

    「うん! だって、ずーーっと一緒にいるもん。今だって傍にいるし」

  • 「……え? 何の話をしているの?」

    「友だちの話だよ! ここにいる……」

    そう言ってココロは宙を指した。
    しかし母親には何も見えなかった。

  • 翌日、ココロはクラスメートにも、もう一人の自分について話した。

    「うちのお母さん、変な顔したの。友だちとずっと一緒なのは当たり前のことなのに」

    「それって、私たちのことじゃなくて??」

    「見えない友だちってどういうこと??」

  • 「も~。ココロちゃんったら。お化けの話はやめてよね~。それより漫画読もっ」

    そう言ってクラスメートたちは流行りの漫画雑誌を開いた。

  • ぽつん、と残るココロ。

    「そんな……。みんなにはいないの?」

    「私がおかしいの?? どうして? 私にはこんなにはっきり、そばにいるってわかるのに……」

  • その日初めてココロは自分だけが周りと違うのだと知った。
    それ以来、ココロはクラスメートたちとなんとなく距離を置くようになってしまった。

  • 「ねえ、ココロ。ピアノの教室に行ってみない?」

    母親がそう言ってきたのは、ココロにいつもの元気がなくなり、心配になったからだった。
    あまり気が向かなかったが、もう一人の自分が行きたいという気持ちをココロに伝えてきたので、ココロは行くことにした。

  • 「はじめまして。私はカナエって言います」

    「カナエ……先生……」

    カナエと名乗ったピアノの講師は、近くの音大に通う学生だった。
    ココロにとって家族や学校以外で会う初めての大人だった。
    長い髪を一つに縛り、ピアノを弾き始めるココロ。

  • 鍵盤ハーモニカには慣れていたため、ピアノにもすぐに慣れた。

    「楽しい……。……うん。楽しいよね」

    もう一人のココロがココロに気持ちを伝えてきた。その日、ココロは久しぶりに笑った。
    それ以来、ココロはカナエのもとでピアノを習うようになった。
    その時だけはもう一人のココロと楽しい時間が過ごせるからだった。

    -第2話 END-

第3話『私だけの宝物』

  • 時が流れ、中学生になったココロはまた周りの人たちと距離を取るようになっていた。
    原因は、カナエが音大の卒業試験のためにピアノの講師をやめてしまい、別の講師のレッスンを受けた時にうっかりもう一人のココロと会話をしてしまったことだった。

  • ココロは今でもその時の講師の目を覚えている。
    困惑と、ココロにどう接すればいいのかわからない……という目。
    そしてそれは、ココロにだけでなく、ココロが見ていた宙にも向けられていた。
    その時の講師の目にショックを受けたココロはピアノ教室をやめ、周囲と距離をとるようになってしまった。

  • クラスメートたちは気さくに話しかけてきたが、ココロは頑なに親しくなろうとはしなかった。

    (だって、またうっかりもう一人と話してしまったら……)

    (またあの子が変な目で見られてしまう。そんなのは、もう嫌なの……!)

    大丈夫だよ、平気だよ、ともう一人のココロはココロに訴えたが、ココロは頑なに拒否をした。

  • ある日、そんなココロの元にカナエが訪ねて来た。

    「留学が決まってね、遠くに行くことになったの」

    「でもその前に、もう一度ココロちゃんに会いたくて」

    「どうしてですか……?」

    「最近ココロちゃんがピアノ教室に来なくなったって聞いたから……」

  • 「それは…………」

    ぎゅっと唇を閉じるココロ。そんなココロにカナエは訴えるように言った。

    「ココロちゃん。あなたにはピアノの才能がある」

  • ココロに不安な気持ちが押し寄せてくる。
    カナエに見つかったことはなかったが、またうっかりもう一人のココロに話しかけてしまい、もう一人の自分の存在を変に思われてしまったら……。

    「私、弾いてほしいの、ココロちゃんに」

    「カナエ先生……。でも……」

    (ダメよ。絶対ダメ……!)

  • そんなココロの気も知らず、カナエは訴え続けてくる。

    「お願い。ココロちゃん。もう一度弾いて」

    「才能があるのに、このままやめてしまうのはもったいないわ」

    「先生……」

  • もう一人のココロも『弾こうよ』と伝えてくる。

    (……わかったわ。あなたに話しかけなければ……。それだけ気を付けていれば……)

    ココロは一度だけ弾いてみることにした。
    カナエと並んでピアノの前に座るココロ。久しぶりに鍵盤に触れる。

  • 指は鍵盤を覚えていて、すらすらと奏でていき、そして同時に強く思った。

    「楽しい……」

    それはもう一人のココロも同じで、ココロに『楽しい』『もっと!』と伝えてきた。
    二人のココロの気持ちが重なり、ココロの指は自由に、踊るように、鍵盤の上を往復した。

  • そのきれいな音にカナエが満面の笑みを浮かべる。

    「ほら、やっぱり! ココロちゃんには才能がある」

    「あなたにはあなたにしか出せない音がある。続けましょう、ピアノ」

    「この街を離れるまでだけど、私が教えるから。ね?」

  • 「違うんです……」

    涙声で答えるココロ。

    「え?」

    カナエはココロの顔を覗き込んだ。
    ココロの頬を涙がつたっている。

  • 「これは私だけの力じゃないんです」

    「どういうこと?」

    「私には、もう一人の私がいるんです。その子が、楽しいって……。音楽が好きだって」

    「ピアノが好きだって伝えてきて、その気持ちが私に弾かせてくれるんです」

  • 「え……?」

    カナエが不思議そうな顔をしたため、ココロはハッと涙を拭いた。

    「ごめんなさい! 変な話をして」

    ココロはなぜこんなことを言ってしまったのかと悔やんだ。
    またもう一人のココロの存在を変だと思われてしまう。せっかくカナエにはずっと知られずにいたのに……。

  • しかし、カナエは優しく微笑んだ。

    「ちっとも変じゃないわ」

    「えっ」

    「きっとそれは、ココロちゃんだけが感じられる、音楽の天使なのよ」

    「天使……?」

  • 「そう。天使。ミューズとも言うわ」

    「いいなあ。私にも天使がいたらなあ……。もう少しうまくなれたかしら?」

    そう言ってココロに笑いかけてくる。

  • 「変って思わないんですか、先生」

    「思わないわよ!」

    「だって、ココロちゃんは、その天使のおかげで、ココロちゃんにしか出せない素敵な音を奏でられるじゃない」

    「変だなんて思えないわ」

  • 「カナエ先生……。ありがとうございます……」

    ココロはほっとすると同時に、受け入れられたことを嬉しく思った。
    それはもう一人のココロも同じだった。

  • ココロは再び、カナエが留学するまでのわずかな間だけピアノを習うことにした。
    その時間はもう一人の自分を拒絶せず自然に過ごせる貴重な時間となった。ピアノを弾いている間は、ココロは笑顔を取り戻し、もう一人のココロも嬉しいという気持ちをココロに伝えていた。

    -第3話 END-

第4話『決意』

  • カナエが留学で街を離れ、ココロはまたピアノから遠ざかっていた。
    同時に、もう一人の自分のことも再び拒絶していた。もう一人の存在を感じていいのはピアノを弾くときだけ、と決めていたからだった。
    海守学院へと進学したココロはクラスメートたちと一定の距離を保ちながら過ごしていた。

  • なるべく心を殺して、日々をそつなくこなして過ごしていく。
    クラスメートから『大人しすぎるよ』『楽しもうよ!』と言われることもあったが、笑って受け流していた。
    もう一人の自分は時折ココロに『寂しい』『会いたい』という気持ちを伝えてきたが、ココロは拒否していた。

  • もう一人の存在を大切に思うからこそ、もう一人の自分を変に思われたくない、傷つけたくない、そういう思いが強くなっていた。
    そんなある日、ココロの元にカナエから一通のポストカードが届いた。
    写真が印刷されたそのカードには、カナエがピアノと並んで写っていた。
    そして短く、『弾いてる?』と綴られていた。

  • カードを見つめながらココロがぽつりとつぶやく。

    「カナエ先生……。また会いたいです……。先生と過ごした時間が、すごく恋しい……」

    もう一人の自分も同じ気持ちを伝えてきた。
    ココロにとっても、もう一人にとっても、カナエと一緒にピアノを奏でた日々は尊い時間だった。
    ココロは二人分の涙をカードにこぼした。

  • その翌日、ココロは校舎の二階にある音楽室へと向かった。
    音楽室には一台のグランドピアノがひっそりと佇んでいる。今なら誰にも見られずに弾くことができそうだ。
    ピアノの前に座り、鍵盤に触れるココロ。
    と同時に、わくわくとした感情がどっと押し寄せてくる。

  • ココロはカナエに教わったクラシックの名曲を弾いてみることにした。
    ひとつひとつ鍵盤に触れ、次第にココロは楽しくなっていった。
    その時、ココロの前に金髪の美少女が現れた。

    「あれ……? 一人?」

    美少女がココロに問う。

  • 「は、はい……一人、ですけど……」

    「おかしいな……。もう一人誰かいると思ったんだけど……」

    「えっ? もう一人って……」

    その美少女は、ココロの質問に応えることなくココロをじっと見つめてきた。
    赤と青のオッドアイで、宝石のような瞳をしている。

  • 「……うん。いる。間違いない。もう一人誰かがいるわ……」

    ココロは思わず立ち上がった。

    「見えるの!?」

    「ううん。感じるだけ。でも、いるでしょ? 2人のすごく楽しそうな空気が漂ってるもの……」

  • ココロはすぐには返事ができなかった。初めてココロと同じようにもう一人の存在を『感じる』と言ってくれる人が現れたことに驚きと喜びの感情が一気に溢れてきたためだ。

    「あの……あなたは……?」

    「私? 私はリアン。あなたは?」

    「ココロっていいます」

    「そう。ココロ……。素敵な名前……」

    そう言ってリアンは優しく微笑んだ。

  • 「もう一人の子はなんて言うの……?」

    「そういえば…気にしたことがなかった…。……あっ、ごめん。ごめんってば」

    宙に向かって謝るココロ。
    そんなココロをリアンが微笑ましく見つめる。

  • 「仲がいいんだね」

    「……子どもの頃からずっと一緒だから」

    「そう……」

    ココロの目にはリアンの赤色の方の瞳が一瞬輝いたように見えた。

    「ねえ、ココロ。私たちの部に入らない?」

    「え?」

    「あなたのその大切な人のこと、詳しいことがわかるかもしれない……」

  • その晩、ココロは鏡の前に立っていた。
    ハサミを手に取り、肩まで掲げる。
    ジャキン! ジャキン! 髪にハサミを入れるココロ。

  • もう一人のココロが驚いている。

    「だって、決めたから。もう逃げないって。あなたのことを何と思われても、私は気にしない」

    「ううん、気にする方がおかしかったのよ。だって私はずっとあなたのことが大好きだったから」

    ココロが鏡の中のココロを見つめる。

  • 「……今までごめんね。これからも一緒にいて」

    もう一人のココロが喜びの感情を伝えてくる。
    ココロは子どもの頃のように笑った。

    -第4話 END-


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