更新日:2018/09/25

公開日:2018/09/18

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キャラクターストーリー

NoName編

プロローグ『バンド結成!』

  • 「う~ん……やっぱり、なの……」

    ルーニは研究結果の数値をまとめた書類をメルティから受け取り、溜息を吐く。

    エクステMの能力が、ここしばらく変化していないのだ。
    決して悪いわけではないが、研究者たるもの、現状維持に甘んじているわけにはいかない。

  • 「メルティ、何かいいアイデアある?」

    「具体的な案を算出するにはデータが不足しています。ですが、抽象的な意見でよろしければ」

    もっと人間らしく話せるように、メルティも改良の余地があると、ルーニはワクワクしてきたが……今は置いといて。

  • 「聞かせてほしいの」

    「変化をもたらすには、初体験が効果的です」

    「初体験……ね」

    メルティの言葉の選び方にも改善できる点はありそうだ。だが、的を射た意見である。

  • エクステMの使用者が、初めて行うこと。
    未知の経験をさせて大きな刺激を与えてみる。
    使用者同士の連携も重要なポイントになってくるので、協調性も高まることだとなおよし。

  • 「……あ、そうだ!」

    どうして今まで思いつかなかったのだろう。
    みんなにふさわしい『初体験』があるではないか。

  • 「ライブをやるの!」

    突然のルーニの宣言に、海守学院の研究室に呼び出されたカズシ、シンク、ココロ、リアン、ミカは顔を見合わせた。

  • 「ライブ……?」

    ココロは不思議そうな顔をした。

    「お前たちがやるライブと言えば一つしかねぇだろ」

    ムサシが苦笑する。

  • 「だよね! ライブって言ったらライブでしょ!? やったー! すっごい楽しみ~!」

    ミカには通じたようで、大きく両手を挙げてはしゃぐ。
    ……そうそう、こういう反応を期待していたのだ。

  • 「ライブの意味は多義性がある。プロフェッサー・ルーニは生放送という意味で言ったのかもしれない」

    しかし、シンクは真剣な表情を崩さない。

    「そうじゃないの。みんなでバンドを組んで、ライブハウスで演奏してもらうってことなの」

    誤解のないよう、ルーニは言い直したつもりだったが……。

  • 「もしかして、ライブハウスの『魔影蝕』に出現する特殊なエネミーの存在が確認できたとかか?」

    カズシが言うと、シンクは深く頷いた。

    「そうだな。『Black Chaos』のように、ライブハウスを標的にしている魔力界の住人もいる」

  • 「ち、違うの! 今は戦いのことから離れてほしいの」

    「おいおい、そんなに難しい話はしてねぇぞ? 単純にライブハウスでライブしよーぜってことだよ」

    ムサシのフォローのおかげで、ようやくココロやリアンも納得したようだ。

    「まぁ、深読みするお前たちの気持ちも分かるけどな」

  • 「そうですよ。僕たちは今まで魔力界との戦いのために、音楽を演奏していたんですから」

    「うん……急にライブって言われても……」

    シンクとココロは戸惑いを隠せないようだ。

  • (みんな……真面目過ぎるのも困りものなの……)

    「もちろん、何か理由はあるのよね?」

    シンクとココロの心中を察するように、リアンが言葉を加える。

  • 「もちろんなの!」

    少しでもみんなのモチベーションを高めたくて、ルーニは元気よく片手を上げる。

    「最近、エクステMの能力が伸び悩んできてる。少し前から数値がほとんど横這いなの」

  • 「それはあたしたちも気になってたよね?」

    ミカが言うと、シンクも頷く。

    「あぁ。『魔影蝕』が起こる頻度は高まっているのに、僕たちの力が変化しないのは、好ましいことじゃない」

  • 「いつか壁にぶつかる気がしていたわ」

    「うん、リアンの言う通りだよ。私も、このままでいいのかなって……」

  • (……前言撤回。みんな真面目で嬉しいの)

    現状で満足せず、各々で危機感を抱いていたことには、驚きと共に喜びがあった。
    改めて、この生徒たちにエクステMを託して間違いがなかったと再確認する。

  • 「そこで、ライブなの!」

    ルーニはにっこり笑う。

    「演奏力が高まれば、エクステMの能力値も上がるの。バンドを組んで演奏すれば、みんなの結束力の強化にも繋がるし」

  • エクステMの能力値に変化がないのは、個人で楽器の技術を磨くだけでは越えられない所まで来たということ。

    誰かに『聴かせる』ための演奏方法や、みんなで息を合わせて音楽を奏でることで、次の段階へ進めるはず……とルーニは説明する。

  • 「確かに……。やってみる価値はありますね」

    「えぇ。そういうことなら挑戦してみましょう」

    シンクとリアンに対して、

    「人前で……演奏? できるかな……」

    と、ココロは不安げにつぶやく。

  • 「もぉ~、みんな難しく考えすぎ! みんなでバンドを組んでライブとか、最高に面白そうじゃん!」

    「おう、ミカは話が分かるな。エクステMの能力を向上させるってのは、もちろん大切なことなんだが、もう一つ、お前たちに音楽をもっと楽しんでほしいって意図もあるんだ」

    ムサシに褒められて、ミカは『えへへ~』と嬉しそうに照れる。

  • だが、カズシ、シンク、ココロ、リアンはそれぞれに複雑な表情を浮かべている。
    想像では、もう少しすんなりと提案が受け入れられると思ったのだが。

    「……まぁ、それは追々感じてもらえばいいとして……」

    ムサシも同じ不穏な空気を感じたのか、咳払いをする。

  • 「ほら、楽譜だ」

    デスクの上に積み上げられていた紙の束を、カズシに渡した。

    「全部で3曲な。場所は俺の知り合いが経営してるライブハウスで、大体100人が入る規模だ」

  • 「100人!? ……って、多いの? 少ないの?」

    ムサシから楽譜を受け取りながら、ココロは肩を竦める。

  • 「新人バンドの初ライブにしては、多いよね」

    ミカは、自分の隣で憮然とした表情で楽譜に視線を落としているカズシに尋ねるが、カズシの反応はどこか鈍い。

    ルーニにとって、一番の懸念事項はカズシだった。
    人柄とか、技術とか、そういう問題ではなく……。

  • 「お前たちだけじゃなくて、他にも何組か出演することになってる。だから観客が誰もいないってことはないと思うし、まぁ、楽しんでやってくれ」

    「誰もお客さんがいなくてもちょっと……だけど、人がたくさんいるのも緊張しちゃうなぁ……」

    ココロは不安げに楽譜を眺める。

  • 「目的は集客ではないんだし、僕たちは僕たちらしい演奏をすればいいさ」

    「そうね、観客のことを気にすることはないわ」

  • 「シンクさん、リアン……なんか、落ち着いてるね……」

    「ねね、ボーカルは誰がやるの~? ココロかな?」

    「ミカちゃん何言ってるの!? わ、私は無理だよっ!」

  • 慌てているココロが可愛くて、ルーニは思わずからかいたくなってしまう。

    「もちろん、全曲ココロなの!」

    「うそでしょ、ルーニ先生!?」

    「うん、冗談なの」

    「じょ、冗談……!」

    ココロは楽譜を握りしめたまま、固まった。

  • 「残念ね。ココロの声は綺麗だから、歌もステキだと思うけれど」

    「ルーニも賛成! ……けど、さすがにボーカルはライブ慣れしてるカズシが適役だと思うの」

  • 「……えっ、俺?」

    ハッとして、カズシが楽譜から視線を外す。
    ルーニは口を開きかけたが、ムサシが先に話し始めた。

    「カズシは歌ったことあんだろ? ……その、『イデア』では」

  • 『イデア』は、カズシが所属していたバンドの名前だ。
    1年前の『大消失』により、カズシ以外のメンバーは失われた。
    だからムサシは、『イデア』の名前を出すのに、少しためらったのだ。
    彼は言いにくいことを、自分に代わって説明してくれた。
    こういう気遣いを当然のようにしてくれるムサシに、ルーニは心が温かくなる。

  • 「コーラスならな。メインボーカルはセリが……」

    カズシの表情は、依然曇っている。

  • (心配なのは……『これ』なの)

  • 「それでも未経験よりはいいだろ。本当はシンクとリアンにもボーカルをやってほしかったんだが……」

    名前を出されたシンクとリアンは、驚いてムサシを見る。

    「一曲目はシンクを、二曲目はリアンをイメージして作った曲なんだ。だからやる気あんなら、お前たちが歌ってくれてもいいんだぞ?」

  • 「僕は分不相応だろう。人前で歌ったことはないし、どうパフォーマンスをすればいいかも分からない。盛り下げる結果になるのは目に見えている」

    「私も遠慮しておくわ。ボーカルはバンドの華だもの。中途半端な力量でやるべきじゃないでしょう」

  • 「――ってことだから、カズシ頼むな」

    ムサシはシンクとリアンの反応を予測していたようで、苦笑いする。

  • 「……あぁ、分かった」

    カズシは無造作に楽譜をカバンに押し込んだ。

    「……話はそれだけか? だったらもう帰ってもいいよな?」

  • 「早速みんなで合わせてみないの?」

    早々に研究室を出て行こうとするカズシを、ミカが止める。

    「そんなに急ぐ必要はないだろ」

    「でもせっかく集まってるし、早くセッションしてみたいでしょー?」

  • 「……今日はちょっと予定があるんだ」

    「あ、そうなんだ……」

    「悪ぃ、じゃあな」

    言うなり、カズシは足早に部屋を出て行く。

  • 「カズシくん……なんか元気ない……?」

    「いつもとは、ちょっと様子が違ったな」

    ココロとシンクは、お互い顔を見合わせた。

  • 「まだ伝えてないことがあったのに……。誰か後でカズシにも言っておいてほしいの」

    想定より、カズシのことはしっかりと対処をしないといけないのかもしれない。ルーニは小さく息を吐く。

    「何かしら?」

  • 「ライブは1週間後なの」

    「……えっ」

    ココロは再び固まった。

    「1週間後に、ライブ開催なの!」

    これも研究のため。習熟した演奏ではなく、短期間の練習でどれほどの成果があるか、データを取りたかった。

  • 「1週間後って、そんな急過ぎますよ……!」

    ココロは慌てるが、シンクとリアンは淡々と話を進める。

  • 「なら、個人練習は2日で済ませて、残りの5日間は合同練習……というスケジュールでいいだろうか?」

    「そうね。合わせる時間を多めにとるべきだと思うわ。練習場所はあるのかしら?」

  • 「スタジオを予約しておくから、そこに集まればいいの」

    にっこりして、ルーニは答える。

    「ちょ、ちょちょ、ちょっと待って……! みんな、当たり前みたいに話進めてるけど、1週間でそんな……私たちバンドなんて未経験なんだよ??」

  • 「もう決まってしまったんだもの。やるしかないわ」

    「でも、リアン……」

  • 「プロフェッサー・ルーニとムサシさんの無茶ぶりは、今に始まったことじゃない」

    一見、無茶だと思える限界に挑戦することで、研究は大きく飛躍する……と熱く語りたかったが、話題がズレてしまいそうだったので、我慢する。

    「シンクさんまで……」

  • 「ちなみにライブ前日はリハーサルで、ライブハウスのステージで演奏するの」

    「え……じゃあ……みんなでの練習に専念できるのって……実質4日間だけってこと……?」

    「そうなるの!」

    ココロは青ざめる。

  • 「大丈夫、だいじょーぶっ! 人間追い詰められれば、結構なんとかなるもんじゃん?」

    ミカは励ましたつもりのようだが、ココロは心ここに在らずいう様子だ。

    「私も早く帰って練習します……!」

    慌てて、研究室を出て行ってしまった。

  • 「心配性ね、ココロは。……とは言え、私も気を抜いてはいられないわ。今日から練習漬けね」

    「あぁ、油断は大敵だ。僕もすぐに帰って練習を始める」

  • 「よし、じゃあみんな! クレープ食べて帰ろー!」

    「ミカ、僕たちの話を聞いてたか!?」

    「平気だよー、楽譜見たけど、二人ならすぐに弾けるようになるって」

  • 「……本当にちゃんと見たか?」

    ムサシの低いつぶやきに、ミカは『え?』と振り向くが、サッと視線を外される。

    「……ミカ、お前はちょっと残ってくれ」

    「ええ? なんで?」

  • 「特別任務があるんだ」

    「特別……任務?」

    ミカの顔は百面相のように変わった。
    最初はきょとんとして、次にぱあっと明るくなった。面白いことを見つけた時の表情だ。

  • (……だけど、ごめんなの)

    これからミカに言い渡されることは、彼女を大いに落胆させるだろう。

    「問題は山積みですね」

    メルティがつぶやいた。

    「うん……」

  • 直近の問題はミカを『説得』すること。

    ココロはかなり緊張しているようだし、リアンやシンクは楽器歴も短く、『魅せる』ための演奏経験はない。ただのセッションとライブは、大きく違う。
    ――そして、一番はカズシ。

    (…………それでもカズシが必要なの)

  • 「今回の作戦名を決めますか?」

    メルティの提案に、不要だとも思ったが、ルーニは考え直す。何事にも名前がついていると効果が上がる気がする。名称に、目標や想いを込めるのだ。

    こうして、『ライブでエクステMパワーアップ作戦』……という、そのままの名前の計画は始動した。

  • ライブまで、あと7日――。

    -プロローグ END-

第1話、第2話

NoName編 第1話、第2話

  • NoName編 カズシ
  • NoName編 ココロ
  • NoName編 シンク
  • NoName編 リアン
  • NoName編 ムサシ
  • NoName編 ミカ

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